過払い金の時効は「最後の返済から10年」
過払い金を返還要求する権利は民法で定められた時期を経過すると消滅してしまい、このことを法律用語で「消滅時効」と言います。
過払い金の消滅時効は原則として「最後の返済から10年」となっており、過払い金を取り戻したいときはこの原則に注意しなくてはなりません。
たとえば平成15年に完済している借金の過払い金の消滅時効は平成25年なので、この場合はもう過払い金を返還してもらうことはできなくなっています。
しかし平成20年に完済していればまだ10年経過していないので過払い金を請求することができます。
ちなみに今も返済中の借り入れなら「最後の取引から10年」で消滅時効が成立するので、まだ時効ではありません。
同じ貸金業者から借り入れと返済を繰り返した場合
消滅時効の基本は最後の返済から10年なのですが、誤解されがちなのが小間切れに取引を行っていた場合です。
具体的には同じ貸金業者から長年に渡って借り入れと完済を繰り返している状態のことで、たとえば平成15年に借り入れをし、平成17年に完済、また平成18年に新たに借り入れて平成20年に完済しているなどという場合がこれに当たります。
このケースでは平成17年から18年にかけて取引に間がありますが最後の完済が平成18年なので消滅時効は平成28年になります。
これは同じ貸金業者との契約であれば、バラバラの契約とは考えずに一つのつながった契約・取引と考えるためです。
基本は「最後の取引から10年」だととらえてください。
ややこしいのは「取引の分断」と判断されそうなケース
このように過払い金を請求できるかの時効の焦点は最後の取引から10年が経過しているかということなのですが、この原則が微妙なケースでは貸金業者が消滅時効の成立を訴えてくることがあります。
一つは取引と取引の間に1年以上の期間があることです。
この場合ではこの1年間の空白のために一連の取引とは認められず「取引の分断」だという貸金業者の主張が通り、過払い金が減額されることがあります。
二つ目は借金の返済途中で返済が滞り、新たな貸し付けを停止されたケースです。
このケースでは貸金業者が貸し付けを停止したときから10年で消滅時効が成立すると主張することがあります。
実際は貸し付けを停止されても返済を続けていれば貸し付けの停止の時期が消滅時効の起算点になることはありませんが、この主張をされると過払い金の返還に時間がかかることがあります。
また、古い取引の完済が今から10年以上前だと消滅時効が成立し、前の取引の過払い金は取り戻せなくなります。
民法の改正で消滅時効が5年に?
平成29年の5月に民法が改正され3年以内に施行されますが、これに伴って過払い金の消滅時効の成立期間が短くなってしいます。
主な変更点は「債権を行使できるときから10年」であったのが「債権を行使できると知ったときから5年」に短縮されることです。
これでは「消滅時効が10年から5年に短縮されるの?」と慌てるかもしれませんが、民法改正が適用されるのは「施行後の取引」からなので、施行前に完済した借金については従来通り10年が消滅時効です。
しかしそれでも前述した通り「取引の分断」など、期間が開けば開くほど貸金業者に有利になり請求者に不利になるのが過払い金問題です。
請求を考えている場合は1日でも早く動くことが大切になるでしょう。